HPE Arubaスイッチ構築におけるトラブル対応経験
弊社にてHPE製シャーシ型スイッチ(5406Rzl2 Switch)の構築機会があった際に発生した、初回電源投入時のトラブル対応事例についてご紹介します。
シャーシ型機器特有の落とし穴と、現場で実施した切り分け手順を共有することで、同様の事例に直面した際の参考となれば幸いです。
機器構築の現場で最も注意を要するタイミングのひとつが、初回電源投入(いわゆる「火入れ」)です。
電源投入直後にフロントLEDが正常表示(緑)ではなくオレンジ点滅(エラー)となった場合、原因はハードウェア・モジュール・設定情報のいずれかに分かれ、それぞれで切り分けの手順が異なります。
対象機器は、HPEのシャーシ型スイッチ「5406Rzl2 Switch」です。
(https://x.gd/C2kmP ←機器詳細はこちら)
電源投入後にslotAのLEDがオレンジ点滅となり、ここからトラブルシューティングを開始しました。

切り分け①:ハードウェア起因の可能性
最初に行うのは、「どこが原因か」を絞り込む切り分けです。
- シャーシ本体の問題か
- 挿入しているモジュールの問題か
上記を切り分けるため、以下を実施しました。
- 再起動
- ラインカードの差し替え(slotA→slotBなど)
結果:シャーシ本体側の問題の可能性
他スロットに差し替えたモジュールは正常に動作しました。
さらに、show modulesコマンドで状態を確認します
Core Mod
Slot Module Description Serial Number Status Dump Ver
----- -------------------------------------- -------------- -------- ----- ---
MM1 HP J9827A Management Module 5400Rzl2 XX Active YES 1
B HP J9537A 24p SFP v2 zl Module XX Up YES 2
C HP J9637A 12p GT PoE+/12p SFP v2 zl... XX Up YES 2→ slotAが認識されないことを確認しました。
この結果をエビデンスとしてメーカーへ問い合わせを行い、初期不良として交換対応となりました。
切り分け②:交換後も発生した別の問題
ここで終わらないのが、シャーシ型機器のトラブル対応です。
交換品を再度「火入れ」し、構築を進めていくと、別スロットで再びオレンジ点滅が発生しました。
切り分け①と同じくハードウェア起因と判断したくなる場面ですが、ここで安易な決めつけは禁物です。
状態確認を行ったところ、slotは認識されています。一方でモジュールは「Failed」状態でした。
Core Mod
Slot Module Description Serial Number Status Dump Ver
----- -------------------------------------- -------------- -------- ----- ---
MM1 HP J9827A Management Module 5400Rzl2 XX Active YES 1
A HP J9637A 12p GT PoE+/12p SFP v2 zl... XX Up YES 2
B Failed -
C HP J9988A 24p 1GbE SFP v3 zl2 Mod XX Up YES 3
D HP J9988A 24p 1GbE SFP v3 zl2 Mod XX Up YES 3
E HP J9537A 24p SFP v2 zl Module XX Up YES 2つまり、スロットは正常だが、モジュールが認識されていない状況です。
切り分け①とは異なる挙動であり、ハードウェアの可能性は低いと判断できます。
結果:シャーシ型特有の“設定の記憶”

さらに切り分けを進めた結果、最終的な原因は「モジュール構成が設定として記憶されていたこと」と特定されました。show running-configで確認すると、以下のようにモジュール構成が定義されていました。
module A type j9637a
module B type j9537a
module C type j9988a
…状況を整理すると、以下の通りです。
- 以前の構成情報が設定として残っていた(構築途中で構成変更・モジュール入れ替えを実施していた)
- 実際に挿入したモジュールと、設定上のモジュール定義が不一致
→ 結果としてモジュールが「Failed」と認識されるエラーが発生していました。
解決方法
対処そのものはシンプルです。
- 初期化(設定クリア)
初期化によって保持されていたモジュール情報がリセットされ、実装と設定が一致した結果、モジュールは正常に認識されるようになりました。
本事例のポイントと再発防止チェックリスト
シャーシ型スイッチのLEDエラーは、見た目の症状が同じでも原因が「ハードウェア」と「設定の記憶」の双方にまたがる点が特徴です。
同種の機器を扱う現場では、以下の観点が切り分けの精度を左右します。
- LEDの症状が同じでも、症状の再現条件(slot単位/モジュール単位)を必ず分けて確認する
show modulesでslot認識・モジュール認識・Statusを必ず切り分けて読み取る- 交換・再投入後に再発した場合は、ハードウェア起因と決めつけず、
show running-configで設定との不一致を確認する - 構成変更・モジュール入れ替えを行った機器では、構成情報が「設定として残っている」ことを前提に確認する
- 初期化(設定クリア)は有効な選択肢ですが、既存設定の退避・記録を実施したうえで判断する
シャーシ型ネットワーク機器の現場対応では、ハードウェア・モジュール・設定の3層を独立した切り口として扱うことが、トラブルシュート短縮の近道となります。